仙石東北ラインに関する豆知識

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仙石東北ライン(せんせきとうほくライン)とは、東日本旅客鉄道宮城県仙台市石巻市を、東北本線仙石線経由で結ぶ東日本旅客鉄道(JR東日本)の系統路線名である。
本項では、正式な路線名を記す必要がある場合を除き、東北本線を指す場合は旅客案内上の呼称である「東北本線」を、仙石線を指す場合は旅客案内上の呼称である「仙石線」を用いる。

概要

宮城郡松島町にて仙石線と東北本線の接続線となる仙石線・東北本線接続線事業を行ったことで実現した。仙台駅から松島駅まで東北本線、松島駅から高城町駅まで接続線、高城町駅から石巻駅まで仙石線を走行するルートで2015年5月30日から運行を開始した。 (東北本線と仙石線の実際の分岐点は、東北本線側は塩釜駅 - 松島駅間、仙石線側は松島海岸駅 - 高城町駅間であるが、前者は松島駅構内扱い、後者は高城町駅構内扱いとなる。) 運行経路については、仙台駅 - 松島駅 - 高城町駅 - 石巻駅間では # 東北本線(仙台駅 - 松島駅間):東北本線を走行 # 東北本線(松島駅 - 高城町駅間):東北本線・仙石線接続線を走行(正式名称は東北本線支線) # 仙石線(高城町駅 - 石巻駅間):仙石線を走行 を経由する。 駅構内におけるラインカラーの表現は、東北本線で使用される青緑()と、仙石線で使用される水色()を併記した形式となる。

運転開始の背景

仙石東北ライン運転開始の背景として、次の点が挙げられる。

震災後の復興事業

後述する仙石線・東北本線接続線は、国鉄民営化後のJR東日本誕生から間もない1991年から1992年頃の時点で現路線と同じルートで計画されていた。しかしながら、東北本線と仙石線の電化方式の違い(東北本線は交流電化、仙石線は直流電化)がある事と、国鉄民営化から数年が経過したJR東日本の経営体力とコスト面での折り合いがつかず、計画を継続して持ち続けていた。 東北地方太平洋沖地震東日本大震災)発生後、ハイブリッド気動車という新技術が育ったことと甚大な被害を受けた沿線自治体の震災復興を目的として、沿線自治体からの長年の要望を実現するに至った。

速達性の向上

仙石線は宮城電気鉄道により建設された元私鉄路線(戦時買収私鉄)のため、駅間距離の短さ・停車駅の多さにより列車速度が遅い線区である。加えて、多賀城駅から仙台駅方面は各駅に停車する列車の利用者が多いにも関わらず、追い越し設備(退避設備)が無いため、首都圏の多くの路線で行われているような緩急接続ができず、快速列車の増発が難しい状況であった(これは仙台駅周辺を走るJR東日本所属の路線全てに共通する課題である)。 仙台近郊の東北本線も退避設備が無いが、同路線は仙石線に比べ駅間距離が長く、停車駅が少ないことから速達性が高い線区である。この両線を結ぶ接続線を整備することで、沿線自治体からの仙台駅 - 石巻駅間の移動を1時間以内に収めたいという要望を実現した。

高速バスとの競合対策

ミヤコーバスが現在運行している高速バス路線である仙台 - 石巻・女川線は、1998年の運行開始当時には仙台 - 石巻間を1日4往復運行していた程度であったが、徐々に本数を増やしていた。そして、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)により仙石線が大津波により甚大な被害を受けたのと対照的に、高速バスについては高速道路の通行規制等の影響により震災後数日間は運休したが、同年3月19日には臨時便として運行を再開。その後は仙石線の全線復旧への見通しが全く立たない中、石巻と仙台を直結する数少ない公共交通機関としての地位を確立。急増した需要に応えるため、数度におよぶ増便を経て、2015年5月の仙石線復旧まではほぼ震災前の倍の回数で運行していた。(高速バスの詳しい歴史は仙台 - 石巻・女川線を参照。) 鉄道側も高速バスに対抗するため、東北本線・石巻線経由の「直通快速」を朝夕1往復ずつの計2往復(平日は朝の上り1本、夕方の下り1本の時もあり)が仙台駅 - 石巻駅をノンストップで運行されていたが、石巻線のダイヤや車両運用の制約からこれ以上の増発は困難であり、利用客は100人程度に留まっていた。 その為、仙台都市圏石巻都市圏のメインルートとしての鉄道の復活をアピールするため、当路線が設けられた。 なお、高速バスについては、仙石線の全線復旧及び当路線の運行開始と同時に減便している。

仙石線・東北本線接続線

東日本大震災により被災した仙石線沿線市町の復興支援を目的に、利府町から松島町にかけての、仙石線東北本線の並走区間に単線の連絡線を整備した。なお、接続線の設置場所は、塩釜駅 - 松島駅で東北本線と仙石線が接近する複数地点の中でもっとも駅に近いこと、それぞれの線路の高低差が揃うこと、駅間が長く列車のスピードが速い東北本線に、石巻側からなるべく早く乗り入れ可能な場所という条件から選ばれた。2015年5月30日開業。総事業費は約18億円。内、約4億4000万円を宮城県仙台市石巻市等の沿線自治体が、国勢調査での仙台市への通勤通学者の割合に応じて負担している。接続線部分の輸送人員は3,000人/日を見込む。 仙石線は直流電化区間、東北本線は交流電化区間と電化方式が異なることから、非電化で整備され、ハイブリッド気動車HB-E210系での運行となっている。

路線データ

上記新設区間の線籍は、東北本線に所属する支線として扱われる。全区間が仙台支社の管轄。

運賃の計算の特例

上記の通り、当路線は松島駅と高城町駅を結んでいるとして扱われるが、松島駅ホームは経由しないので松島駅に停車する列車は存在しない。 このため、特定の分岐区間に対する区間外乗車の特例が設定されており、松島または愛宕以遠(品井沼方面)の各駅と高城町以遠(松島海岸または手樽方面)の各駅との相互間を、仙石東北ラインにて高城町駅 - 塩釜駅間を利用し東北本線松島駅方面の列車に乗車、あるいはその逆区間を利用する場合、塩釜駅 - 松島駅間の往復キロ程を算入せずに運賃を算出することになる。ただし塩釜駅での途中下車はできない。 全線が仙台近郊区間内であるため、発着駅によっては実際の乗車区間の営業キロとは異なる距離と異なるキロ程で計算される。

運行形態

全列車が、東北本線仙台駅 - 仙石線石巻駅間を特別快速または快速として運転され、普通列車は存在しない。なお、仙石線区間では205系3100番台により運行する列車が、東北本線区間ではの快速の運行時間帯では、E721系701系719系により運行される列車が、各路線内で普通列車の役割を果たしている。 おおむね1時間1本の運転であるが、石巻7・12時台発の上り列車、仙台11時台発の下り列車は設定されていない。 仙台9時台発・石巻20時台発の上下1往復は特別快速として運転され、仙台 - 石巻間の途中停車駅は塩釜駅高城町駅矢本駅のみ。全区間の所要時間は上下列車共に52分である。 仙台7・8時台及び16時以降発、石巻6時台及び15時台〜19時台発の列車は、種別表示色の快速として運転され、東北本線内は途中、特別快速と同じく塩釜駅のみに停車するが、仙石線内は野蒜駅陸前小野駅矢本駅・及び陸前赤井駅 - 石巻駅間の各駅に停車する。 仙台6時台及び10時台〜15時台発、石巻8時台〜14時台発の列車は、種別表示色の快速として運転され、仙石線内は赤の快速と同じ停車駅であるが、東北本線内は経由する各駅に停車する。他社であれば区間快速として種別が設定される列車であるが、JR東日本の快速列車は基本的に快速>普通であるため、区間快速という種別は設定されていない(列車種別#区間種別と同様の運行形態をとる列車も参照)。 2015年8月1日に開催された石巻川開き祭りに合わせて、石巻21時台発のの快速が臨時列車として運行された。

車両

  • JR東日本HB-E210系気動車
  • : 日和山公園石巻市)や矢本海浜緑地(東松島市)、シオガマザクラ塩竈市)等、沿線の桜の名所をイメージした桜色と、仙石線のラインカラーである青色を中心に据え、JR東日本のコーポレートカラーである緑色を加えた車両デザインが施されている。仙石線と同様に、1列車4両を基本に運行するが、仙台12時台発と石巻13時台発のの快速のみ2両で運行する。

沿革

  • 2012年(平成24年)10月18日 - 東日本旅客鉄道が、東日本大震災により被災した仙石線沿線自治体の復興支援を目的に接続線整備計画を発表。
  • 2013年(平成25年)
  • * 3月25日 - 国土交通省が、接続線鉄道事業を許可。
  • * 7月2日 - 接続線用の新型車両(HB-E210系)製造計画を発表
  • 2014年(平成26年)7月30日 - 列車の愛称が「仙石東北ライン」に決定。
  • 2015年(平成27年)
  • * 1月29日 - 東日本旅客鉄道、開業日を発表。
  • * 2月26日 - 東日本旅客鉄道、接続線内を走る列車の停車駅や運行本数等を発表。
  • * 3月14日 - 開業に先駆けたダイヤ改正に合わせ、一部乗車券を除いて新たな運賃計算ルートの適用開始。
  • * 5月8日 - 接続線内にて、列車の試運転を開始。
  • * 5月30日 - 仙石線全線復旧に合わせ、開業。
  • * 9月30日 - グッドデザイン賞を受賞

駅一覧

  • 停車駅…仙台 - 松島 - 石巻間について記述。仙石線区間は仙石東北ラインが停車する駅のみ記載。
  • * 仙石東北ライン…●印の駅は全列車停車、‖印の駅はホームを経由しない
  • 線路 … ‖:複線区間、∨:これより下は単線、◇・|:単線区間(◇は列車交換可能駅)、∧:終点(列車交換可能)
  • * 東北本線の仙台 - 塩釜間は複線、接続線及び仙石線区間は単線。
  • 全駅宮城県内に所在
線籍 駅名 駅間営業キロ 累計営業キロ 快速 快速 特別快速 接続路線・備考 線路 所在地

整備効果

所要時間の短縮と停車駅

列車種別 仙石東北ライン 所要時間
(最速達)
備考 東北本線 仙石線
  • : 一部停車、■:石巻線ホームに発着
  • 陸前赤井駅と蛇田駅の間に石巻あゆみ野駅が2016年3月に開業予定。
仙台駅 - 石巻駅間の速達列車を接続線経由で走らせることにより、10分程度の平均所要時間の短縮が見込まれている。また、接続線開業に伴って、仙石線の快速列車は全て仙石東北ライン(接続線経由)による運転となり、あおば通駅を発着する列車は各駅停車のみとなる

営業キロの短縮

当接続線事業により、仙台駅と仙石線高城町駅以東の区間の営業キロが変更。これにより、運賃が値下げされた区間が発生した。なお、仙台駅 - 高城町駅間の営業キロは、同駅 - 松島駅東北本線)に0.3kmを加えた23.7kmとなり、仙石線の当該営業キロである25.0kmから1.3kmの短縮となる。 例として、仙台駅 - 矢本駅間では、接続線事業に伴う営業キロの短縮(1.3km)と仙石線の内陸移設に伴う営業キロの短縮(1.2km)によって、760円(IC運賃 756円)から670円(同 669円)に、あおば通駅 - 石巻駅間では、同様に970円(同 972円)から840円(同 842円)にそれぞれ値下げとなった。

その他

  • 今後2?3年以内に、接続線内への列車の進入をよりスムーズに行うことが出来る様に改良工事を実施する予定となっている。これにより、所要時間の更なる短縮が見込まれる。
  • 宮城県や石巻市、女川町は、仙石東北ラインの石巻線乗り入れ・女川駅までの延伸を要望。実現に向けて、宮城県は協力する姿勢を示している

脚注

注釈

出典

参考文献

  • 『鉄道ジャーナル』2015年10月号、2015年。p28 - 41。

関連項目

外部リンク

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